みなさん、少女マンガはお好きですか? 胸キュンシーンにときめきまくり、放課後の教室で友達と「誰派!?」で盛り上がり……たくさんの名作を通して「青春」を一緒に経験してきましたよね。

とはいえ、大人になった今、あの頃のようには読まなくなってしまった……という人も少なくないはず。あの頃の気持ちを忘れつつある忙しない毎日、今こそピュアなときめきを浴びてみるのはどうでしょう?

高校生4人の恋愛がピュアに、胸キュンたっぷりに綴られる「思い、思われ、ふり、ふられ」。アニメーション映画化を記念して、原作者である咲坂伊緒先生と、平成生まれのオタク女子ユニット・劇団雌猫メンバー(もぐもぐさん、ひらりささん)との座談会を行いました!

「ストロボ・エッジ」「アオハライド」世代の劇団雌猫メンバー。「ふりふら」原作を読み、アニメを見てみたらあの頃のドキドキが蘇ってきました。

「ふりふら」原作全12巻を手元に置いての座談会は大盛り上がり! 前編では、咲坂先生の「映画のここを見てほしい!」という感想から、10代の恋愛を描き続ける理由まで、少女マンガを愛する二人がたっぷり聞き出しました。

劇団雌猫とは?

様々なジャンルを追いかける、平成元年生まれのオタク女性4人(もぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケ)からなるグループ。同世代のオタクのリアルな打ち明け話を詰め込んだ同人誌「悪友」が話題に。編著に「浪費図鑑」(小学館)、「だから私はメイクする」(柏書房)など。最新刊は「海外オタ女子事情」(KADOKAWA)

座談会メンバー

咲坂伊緒

6月8日生まれ、東京都出身。B型。1999年、「サクラ、チル」でデビュー。「ストロボ・エッジ」「アオハライド」、今作「思い、思われ、ふり、ふられ」などを手掛ける。“胸キュン”がぎっしり詰まった青春ラブストーリーが大人気のマンガ家。

もぐもぐ

劇団雌猫メンバー。少女時代は「りぼん」「別冊マーガレット」を愛読。頻度は下がっているけど大人になっても少女マンガ好きで、電子書籍を夜中にポチりがち。咲坂作品では「ストロボ・エッジ」の安堂くんが好き。

ひらりさ

劇団雌猫メンバー。「りぼん」のあとBLを読み始めてしまったが、大人になってからむしろ、恋愛マンガを一気読みするのにハマっている。「ふりふら」では朱里の元カレ・亮介が好き。

アニメならではの胸キュン演出が最高♡
咲坂先生のおすすめシーンは?

もぐもぐ
アニメ映画「ふりふら」、一足お先に拝見しました! シャボン玉が飛んだり、お花畑がぶわーっと広がったり……。画面いっぱいに「胸キュン」を表現する演出がすごくよかったです! 先生は、映画をご覧になっていかがでしたか?
咲坂伊緒
まず、単行本12巻分のボリュームがしっかりまとまっていて、感動しました。脚本時点で私も細かいところを見させていただいたのですが、エッセンスがギュッと詰まったストーリーになっていると思います。
もぐもぐ
原作が大好きな人はもちろん、「ふりふら」が気になっていた人、おさらいしたい人にも ぴったりですよね。「ストロボ・エッジ」「アオハライド」は読んだけど「ふりふら」には触れてない、という人も咲坂先生ワールドを楽しめると思います。原作にはないシーンも結構多くて「こう来たか!」と比べながら観るのも楽しかったです!
咲坂伊緒
作中、由奈が階段を駆け上がるシーンがあるんですが、「アニメだと、こんなに臨場感が出るんだ!」と感動しました。実写でも難しいカメラワークではないでしょうか。ぜひ注目してほしいです。
ひらりさ
あのシーン、よかったですよね。私は今回初めて「ふりふら」に触れたんですが、一気読みで。キャラクター同士がちゃんと向き合っているところにすごく感動して……。
もぐもぐ
わかる。大人よりよっぽどちゃんと恋愛してる感じがするよね。
ひらりさ
「こんなに相手のことを思いやっていて、みんないい子!みんな応援したい!」って気持ちでいっぱいに(笑)。アニメでは声優さんの演技も相まって、一人ひとりの心情がさらに胸に迫ってきました。
もぐもぐ
映画化のお話があったときに、咲坂先生から「ここだけはこうしてほしい!」とお願いしたところはありましたか?
咲坂伊緒
ほとんどなかったですが、朱里のお母さんをどう描くかのニュアンスについては、脚本家さんと何度も調整しました。「子どもにガミガミ言う怖いお母さん」という、記号的な存在にしたくなかったんです。
ひらりさ
なるほど! 映画では井上喜久子さんが、お母さんの多面的なところをしっかり演じられていたなと思いました。中学の同級生から、義理の姉と弟になってしまった朱里と理央の関係性をひもとく上で、2人の両親の描写ってとても大事ですよね。そもそも、10代の子たちにとっては、家族ってとても大きな存在ですし。「ふりふら」ではそこが自然に描かれていて、「わかるなあ……」と思いながら、朱里たちを応援していました。

「10代の頃にしか体験できない感情がある」
リアルな青春を描く上で大切にしてきたこと

もぐもぐ
「ストロボ・エッジ」「アオハライド」そして「ふりふら」と3作品にわたって10代の恋愛を描いてきました。その中で大切にしてきたことはありますか?
咲坂伊緒
その年代特有の「120%受け止めてしまう」感じを描きたいと思っていました。10代の頃の悩みって、今思えば「何であんなことで悩んでたんだろう?」って思ったりするじゃないですか。
ひらりさ
あるある!
咲坂伊緒
この感覚を、今10代として日々を過ごしている子に直接言っても、もしかしたら本人たちにはピンとこないかもしれない。でも振り返ると、その頃にしか体験できない喜怒哀楽があるというか……。そういうものを描けたらいいな、とずっと思っています。
もぐもぐ
その頃にしか体験できない喜怒哀楽、本当にそうですよね……!大人が読むと「この感情、覚えがある!」ってなりますし、当時を思い出して「うわ〜〜!!」ってなります(笑)。別に恋愛に限らず、誰かと心の距離を詰めていくのってこういうことだったなあ、って。
ひらりさ
なんかね、高校の頃やだなって思ってた人にも、私にはわからない胸の内があったのかなとか思わされるのも「ふりふら」の好きなところで。
もぐもぐ
うんうん。それぞれの人生に思いを馳せちゃうよね。
ひらりさ
私は原作に登場する朱里の元カレ・亮介が大好きで。ああいう、一見「ちょっと嫌だな」って感じるキャラクターについても、ちゃんと後から「そういう風に考えていたんだ」っていうことが描かれているのが、咲坂作品のやさしいところだなと思います。
咲坂伊緒
ありがとうございます! 現実でも「あれ?話してみたらいいやつじゃん」っていうことは、結構あると思うんですよ。ちゃんとひもといていけば、キャラクターみんなを好きに なってもらえるかな、と思っています。

恋愛観はひとつじゃない。
2人のヒロインを主人公にした理由

もぐもぐ
「ふりふら」は、由奈と朱里という2人の主人公がいることで、作中で描かれる感情の動きや恋愛観にバリエーションが生まれていますよね。
咲坂伊緒
最初は朱里ひとりを主人公にして描くつもりだったんですが、彼女の内面や本当の性格を描くまでには、少し時間がかかるなと思ったんです。そこで、真反対な性格の由奈をもう1人の主人公として置くことにしました。
もぐもぐ
それぞれに恋愛観があって、どちらが正しいってことはなくて……というテーマが、物語の序盤から描かれてましたよね。
咲坂伊緒
そうなんです。由奈と朱里、どちらにも違った恋愛観があって、どちらもいいよねっていうことが描ければいいなと思って。
もぐもぐ
作者としては、これまで描かれた2作品とはまた違う角度からのアプローチだったんでしょうか。
咲坂伊緒
一途で心変わりしない、いわゆる「読者に人気が出る主人公」がすべてじゃなくていいん じゃないかな? と思った時があったんですよね。少女マンガを読む人の好みを固定したくなかったというか。
もぐもぐ
朱里と由奈だけでなく、理央と和臣も合わせた4人が、それぞれ影響を与え合いながら物語が進むのがとてもよかったです。人間関係って、「付き合う」「付き合わない」だけじゃないですもんね。
ひらりさ
個人的には、和臣の魅力の引き出され方が面白かったです。由奈の目線から見ると、和臣ってすごく普通の幼馴染に見えるんですよね。でも、朱里と和臣がやり取りしていくことで、由奈が引き出せない和臣の魅力が引き出されていくという……。
咲坂伊緒
そう、相手役によって良さが出てくるんですよね。朱里にしか引き出せない和臣の良さがあるんです。
もぐもぐ
でも、二組のカップルを1つの作品で描くのって、めちゃくちゃ大変そう……。
咲坂伊緒
めちゃくちゃ大変でした……(笑)。
もぐもぐ
やっぱりそうですよね!(笑)
咲坂伊緒
大変なのはわかってたんですが、どれくらい大変なのかを知りたくて描いたところもありますね。
ひらりさ
普通は一組のカップルを描くところが、倍になってるわけですからね。
咲坂伊緒
この2組をまったく関係させずに描くんだったら、そんなに大変じゃなかったと思うんですが……。4人を影響し合わせなきゃいけないので、もうお手玉みたいでした(笑)。
もぐもぐ
お手玉(笑)!
咲坂伊緒
片方のカップルのことを描いても、「この時、向こうの2人はこんなことをしていて……」って、頭の中で考えちゃうんですよね。
ひらりさ
ミステリーみたいだ……。でもその苦労が、二組のカップルをリアルに描くことにつながっていたのかなって思います。